アウトプット仮説とは?第二言語習得に関するスウェインの仮説

第二言語習得において、インプットとアウトプットはどちらがより効果的なのでしょうか。「インプット仮説」で知られるスティーブン・クラッシェン氏は、第二言語習得においてアウトプットの習得によりもたらされる結果でしかなく、理解可能なインプット(Comprehensible Input)を与え続けることのみが第二言語習得につながるとして、アウトプットの有用性を否定しました。このクラッシェン氏の仮説に対して反論したのが、メリル・スウェイン(Merrill Swain)氏が1985年に提唱した「アウトプット仮説(The Output Hypothesis)」です。スウェインは、第二言語習得においてはインプットだけでは不十分であり、アウトプットが必要であることを提唱しました。ここでは、アウトプット仮説について詳しくご紹介します。

メリル・スウェイン(Merrill Swain)とは?

メリル・スウェイン氏は、トロント大学オンタリオ教育研究所の名誉教授を務める第二言語習得の専門家で、彼女が1985年に提唱した、第二言語習得におけるアウトプットの重要性を指摘した「アウトプット仮説」は第二言語習得研究の分野で最もよく知られている仮説の一つです。また、スウェイン氏は1980年にマイケル・カナル氏と共同で提唱した「Communicative competence(コミュニケーション能力)」に関するモデルでも知られています。スウェイン氏らは、コミュニケーション能力を「文法的能力(文法規則にそそって正しい文を用いる能力)」「談話能力(単なる文の羅列ではなく意味のある談話や文脈を理解し、作り出す能力)」「社会言語能力(社会的背景や文脈に即して適切な表現を行う能力)」「方略的言語能力(コミュニケーションの目的達成に向けた言い換え・修正などの対処能力)」という4つのモデルに分類しました。

アウトプット仮説(The Output Hypothesis)とは?

スウェイン氏は、クラッシェン氏が唱えた第二言語習得においては理解可能なインプットだけが有効であるとする「インプット仮説」に疑問を投げかけ、第二言語習得においてはインプットだけでは十分ではなく、「話す」「書く」といったアウトプットも必要であるという「アウトプット仮説」を1985年に提唱しました。

ここで重要なことは、スウェイン氏は決してインプットの重要性を否定しているわけではなく、それだけでは「不十分」だと主張していることです。アウトプット仮説においては、インプットは言語の意味処理において主な役割を果たしているのに対して、アウトプットは言語の構文や形式の算出における正確さに貢献する可能性があると指摘しています。このアウトットが第二言語習得において果たす役割について、スウェイン氏は下記の3つを上げました。

  1. Noticing function(気づき機能)
  2. Hypothesis-testing function(仮説検証機能)
  3. Metalinguistic function(メタ言語的機能)

Noticing function(気づき機能)

Noticing function(気づき機能)とは、学習者は話す、書くといったアウトプットをすることで、自分が伝えたいこと(Want)と、自分の能力で伝えられること(Can)とのギャップに気づくことができるというものです。このギャップに気づくことで、ギャップを埋めるために自分の中で不明瞭となっている知識を補強したり、新たな知識を得たりとインプットへの注意がより促されるようになるとしています。

Hypothesis-testing function(仮説検証機能)

Hypothesis-testing function(仮説検証機能)とは、学習者は何かを話したり書いたりアウトプットをする際に、いつもその中に何らかの仮説を暗黙的に含めており、アウトプットをし、相手からフィードバックを得ることでその仮説を検証し、必要に応じて修正していくことを指します。人はアウトプットの中で自分の文法や単語が合っているかを試し、相手にそれが正しく伝わったか、伝わらなかったかという反応を見ながらアウトプットの改善を進め、その繰り返しを通じて正しい知識を定着させていくということです。

Metalinguistic function(メタ言語的機能)

Metalinguistic function(メタ言語的機能)とは、学習者はアウトプットによって自ら学んだ言語について意識的に省みることができ、その自身のアウトプットを制御し、言語に関する知識を内面化することができるという機能のことを指します。アウトプットをすることで、インプット時には目が向かなかった細かい文法ルールなどにも意識が向くようになるというのはまさにこのメタ言語的機能が働くからで、人は自ら話したり書いたりする内容をメタ視点から振り返ることで、学んだ内容を定着させているのです。

まとめ

いかがでしょうか?スウェイン氏が提唱した「アウトプット仮説」の中で説明されている3つの機能は、英語学習者の実感値としても理解できるものです。皆さんの中にも、読めるのに書けない単語や聞けるのに発音できない単語、理解できるのに使えない文法知識などがたくさんあるという方も多いのではないでしょうか。アウトプットをしない限りこうした自分が持っている知識が本当に運用できるのかを検証することはできません。特に日本人の場合は学校教育の現場でインプット中心の教育を受けてきているため、既に十分な知識を持っているにも関わらず「話す」「書く」といったアウトプットとなるとその知識を十分に活用しきれないという学習者が多い傾向にあります。アウトプットをすることで知識と運用能力のギャップを認識することができ、さらにインプットの質を高めることができます。アウトプットが足りていないという方はぜひ積極的にアウトプットをトレーニングに組み入れることで英語の学習効率を上げましょう。

【参照サイト】Output Hypothesis (Merryl Swain)
【参照サイト】Swain (1995), Three functions of output in second language learning

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