なぜお酒を飲むと英語が話せるのか?英語力の向上を妨げる「情意フィルター」とは?

英語を学んでいる方の中には、普段はなかなかうまく英会話ができないけれども、お酒を飲んだ途端に流暢に英語を話せるようになったという経験がある方は少なくないのではないでしょうか?

実は、この「お酒を飲むと英語が話せるようになる」という現象は、第二言語習得の理論から説明ができます。この現象に関わっているのは「情意フィルター仮説」という理論です。

情意フィルター仮説とは?

「情意フィルター仮説」は、第二言語習得研究の先駆者として知られる言語学者のスティーブン・クラッシェン氏が提唱した、第二言語習得に関する5つの有名な仮説のうちの一つです。

「情意フィルター仮説」とは、簡単に言えば学習者が言語学習の過程において感じる不安や自信のなさといった負の感情が、第二言語の習得において障壁となるという仮説です。これは、例えば「間違った英語や下手な発音を話すと周りから馬鹿にされるのではないか」といった不安などが当てはまります。皆さんの中にも、日本人の前だとどうしても恥ずかしくてうまく英語が話せないと感じている方がいるのではないでしょうか。このように、自分の英語力や発音に自信がなかったりすると自然と情意フィルターが上がってしまい、結果として効率的な英語習得の妨げとなってしまうのです。

この情意フィルターを下げるために、英語教育の現場ではできるかぎり学習者の自尊心を高め、不安を取り除くように努めることが推奨されています。フレンドリーな雰囲気でレッスンを進める、言葉に詰まってもじっとこらえて待ってあげる、英語学習の初心者に対して過度に間違いを指摘しすぎないなどがその一例です。

お酒を飲むと、情意フィルターが下がる

上記で説明したように、英語学習中に不安があると情意フィルターが上がってしまい、効率的な学習が難しくなります。しかし、お酒を飲めば自然と気持ちがリラックスできて情意フィルターが取り除かれ、積極的に英語が話せるようになるのです。つまり、お酒は「恥ずかしい」「間違えるかもしれない」といったネガティブな感情を抑制し、麻痺させてくれるということです。

お酒の力に頼らずに情意フィルターを下げるには?

しかし、英会話の場面ではいつもお酒の力を借りられるわけではありません。それではどのようにすれば不安や恥ずかしさから解放され、この情意フィルターを取り除くことができるのでしょうか。ここではおすすめの方法をいくつかご紹介します。

  1. 相手はそもそも気にしていないと心得る
  2. 「つなぎ言葉」のフレーズを覚える
  3. 大声で話す癖をつける
  4. 発音を磨く
  5. リスニング力を磨く
  6. 場数を踏み、人前で英語を話すことに慣れる

1. 相手はそもそも気にしていないと心得る

まず、英会話をするときに相手は自分が思っているほど自分の間違えや発音を気にしていないということを覚えておきましょう。日本人の場合は間違った日本語よりも正しい日本語を聞く機会のほうが圧倒的に多いため、少しでも発音や文法がおかしいだけで違和感を覚えがちなのですが、英語は日本語とは異なりグローバル言語であり、何が正しい英語なのかを定義するのが難しいほど地域によって発音も異なります。ネイティブの人々はノンネイティブの人々が話す間違った英語や癖のある発音にとても慣れていますので、間違いに対する寛容性が非常に高いのです。この感覚の違いを理解しておくだけでも、自然と英語を間違えることに対する恥ずかしさや恐怖心は減るのではないでしょうか。

2. 「つなぎ言葉」のフレーズを覚える

英会話をしていて怖いのが、言葉に詰まってしまったときに起こる「沈黙」です。この沈黙を恐れるあまりに、自信を持って英語を話せないという人もいるのではないでしょうか。この沈黙を防ぐために有効なのは、返す言葉が思いつかないときに、とりあえず間を持たせるための「つなぎ言葉」のフレーズを覚えておくということです。日本語でいうところの「えー」といった言葉です。具体的には、下記のような言葉を覚えておくと便利です。

  • Well..(そうですね~)
  • Ummm..(ああ~)
  • So..(だから~)
  • I mean(私が言いたいのは~)
  • You know(ええと~)

また、質問をされて返答を考えているときは下記のような表現も使えます。

  • Oh that’s a difficult / good question..(それは難しい/よい質問だね…)
  • Let me see..(えーと…)
  • Let me think..(少し考えさせて…)

これらのちょっとした表現を覚えておくだけでも返答に詰まったときに時間稼ぎをすることができ、次の言葉を探す余裕を持つことができます。また、相手にもう一度質問を尋ねたり、相手が質問したことをリピートしたりするのもおすすめです。沈黙が怖くなくなれば、英会話に対する不安が少しは取り除かれるはずです。

3. 大声で話す癖をつける

英語を話すときは普段よりも2倍ほど大きく口を動かして、大きな声で話す癖をつけましょう。初心者の段階では英会話の最中に「自分の英語が相手に通じない」「意味を理解してもらえない」といったことが頻繁に起こります。自分の英語が通じなかったとき、私たちはつい「自分の発音が間違っているのかもしれない」「間違った表現を使っているのかもしれない」などと色々と考えて不安になってしまうのですが、実はただ単純に声が小さくて相手が聞き取れなかっただけ、ということがよくあります。自分の英語が伝わっていないと感じると余計に不安が増幅して情意フィルターが高まってしまいますが、単に堂々と大きな声で話すだけで問題が解決することもあるのです。口を大きく動かし、お腹から声を出すようにして大きな声で英語を話せば、自然と正しい発音もしやすくなります。ぜひ意識しましょう。

4. 発音を磨く

英会話の自信をつける手っ取り早い方法は、ずばり発音を徹底的に磨くという方法です。「ネイティブのように話すことは無理だし、発音はそれほど大事ではない」という意見を聞くこともありますが、発音を磨くことで様々なメリットが得られます。まず、正しい発音ができるようになることで、自然とリスニング力が上がります。自分が発音できる音は、しっかりと聞きとることができるからです。

しかし、それ以上に発音を鍛えることで得られるメリットは、スピーキングに自信がつくということです。日本人が英会話に自信を持てない大きな理由の一つは「正しい綺麗な発音ができないから」というものです。「下手な発音だと馬鹿にされるのではないか」という不安が英語での発信や上達を妨げているのです。逆に、発音さえしっかりと学べば、自然と英語を話すことに自信がつき、より多くアウトプットができるようになります。また、綺麗な発音を相手から褒められることで正のフィードバックが働き、より英語学習に対するモチベーションも上がります。発音を磨くことは、情意フィルターを取り除くうえでとても有効なのです。

5. リスニング力を磨く

上記の3つは主にスピーキングにおける不安を取り除くためのコツでしたが、スピーキングと同様に重要なのがリスニングです。人は「相手が言っていることが分からない」という状況に出くわすと恐怖を感じます。英語が苦手な人のなかには、街中で外国人に話しかけられたときに思わず逃げ出してしまったという方もいるかもしれません。「相手の発言を理解できない」ということはそれだけ不安な気持ちを生むものなのです。この不安な気持ちを取り除くためには、とにかくリスニング力を鍛えるしかありません。むしろ、英会話の初心者にとってはスピーキングよりもこのリスニングのほうが大事です。

スピーキングの場合は、自分が持っている語彙の範囲の中で考えを伝えることさえできればよく、話すスピードも自分でコントロールが可能です。しかし、リスニングの場合は相手が話すスピードや使う語彙や表現を自分でコントロールすることはできません。逆に、相手の言っていることさえしっかりと理解できれば、自分は簡単な英語で返答するだけでもしっかりと英会話は成り立つのです。英会話が続かない理由としては「自分が言いたいことを英語でなんと説明すればよいか分からない」というスピーキング上の課題もありますが、そもそも「相手に何を聞かれているか分からない」というリスニング上の課題もスピーキングと同じかそれ以上にあります。英会話における不安を取り除く上ではリスニング力が大事だということを肝に銘じ、まずはリスニング力を徹底的に磨きましょう。

場数を踏み、人前で英語を話すことに慣れる

最後のアドバイスは、とにかく場数を踏み、人前で英語を話すことに慣れるということです。そのためには、オンライン英会話やマンツーマンレッスンのような一対一の英会話だけではなく、グループレッスンに参加したり英会話サークルに顔を出してみたりするなど、とにかく自分と相手以外の第三者がいる環境で英語を話す経験を積むことが大事です。こればかりは回数を重ねる以外に方法はありませんが、経験を積めば積むだけ自然と不安な気持ちは薄れていき、情意フィルターは下がっていきます。

まとめ

いかがでしたでしょうか?今回は、「お酒を飲むと英語が話せるようになる」という多くの方の実体験をベースに、情意フィルター仮説という第二言語習得の理論をご紹介しました。大人になれば、誰でも失敗が怖くなるものですが、その不安な気持ちは言語習得の妨げになるということを理解していれば、そのうえで不安を和らげるための対策を打つことができます。上記でご紹介したポイントも参考にしつつ、お酒の力を借りずに英語を話す訓練を積み重ねていきましょう。

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ENGLY 編集部

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