モニター仮説とは?第二言語習得に関するクラッシェンの5つの仮説(3)

第二言語習得研究の分野における第一人者の一人である言語学者のスティーブン・クラッシェン氏は、1970年~80年代にかけて「モニターモデル」と呼ばれる第二言語習得に関する5つの仮説を提唱しました。ここでは、そのうちの一つ「モニター仮説」について詳しく説明したいと思います。

モニター仮説(The Monitor hypothesis)とは?

クラッシェン氏は「習得学習仮説」のなかで、大人が第二言語を身につける上では無意識による「習得」と意識による「学習」という二つの独立した異なるプロセスが共存するということを主張しましたが、それぞれが第二言語能力の向上においてどのように機能するのかを説明したのがこのモニター仮説です。

モニター仮説において、クラッシェン氏は「習得」こそが第二言語の発話を引き起こすものであり、「学習」によって得られた知識は「モニター」か「エディター」という一つの機能しか持たないと主張しました。「学習」によって得られた知識は発話の中身を正しい文法や規則に変える場合にのみ機能するもので、それは「習得」による発話が起こった後に使用されるシステムだと説明したのです。これは、下記のモデル図を見ると分かりやすくイメージすることができます。

意識的に「学習」した知識は、「習得」されたシステムによって発話しようとしている内容が正しいかどうかをチェックするモニターとして機能し、このモニターによって発話の内容を変えることができる、という状態を表したのが上記の図です。この状態では、モニターは話す、書くといった最終的なアウトプットの直前で機能しています。つまり、最初の「何を話すか・書くか」といったことが決まるタイミングでは、「習得」されたシステムしか機能していないということです。

上記のモデルに基づいて、クラッシェン氏は意識下における「学習」は第二言語のパフォーマンスにおいては「習得」された体系をより洗練し、正確なものにするという限定的な役割しか持っておらず、「習得」を助けるものではないと主張しました。

また、クラッシェン氏はこのモニターモデルの概念に基づいて第二言語の運用能力を3タイプ(Monitor over-users/Monitor under-users/The optimal Monitor-users)に分けており、このうちMonitor over-usersは発話の際に常にモニターを過剰に使用しており、結果として正しさを重視するあまりに言葉に詰まったり、発話の最中に自己訂正したりするなどしてモニターが流暢な発話の妨げになっていると指摘しました。

モニター仮説に対する批判

このモニター仮説のうち、学習した知識はモニターとして機能するという内容は、英語学習者の実感値としても納得できる部分です。英会話をしているとき、既に習得できている表現については無意識でも正確に使うことができるものの、三単現のsや時制など間違えやすい文法や規則は発話する前に頭で意識することで何とか正しい表現ができるという方も多いのではないでしょうか。また、学習により身につけた「正しい文法」で話さなければいけないという強迫観念により、スムーズに英語を話すことができていないという方もいるかもしれません。

一方で、このモニター仮説に対しては批判も数多くあります。主な批判のポイントは「習得学習仮説」に対する批判と近いのですが、はじめは意識的に「学習」した知識であってもそれを繰り返し反復することでいずれ無意識でも正しく使えるようになる「自動化」が起こり、「習得」した状態になるという意味で、クラッシェン氏の「学習」が第二言語運用の能力向上に与える役割は限定的だという考えは間違っているというものです。こちらも英語学習者の実感値として同意ができる部分です。「学習」と「習得」は互いに独立したプロセスというよりも連続的なものとして捉えたほうが自然だと感じます。

まとめ

いかがでしょうか。モニター仮説では、「習得」したシステムと「学習」したシステムそれぞれが果たしている役割の違いについて説明されています。第二言語の発話においては「習得」されたシステムしか有効ではなく、「学習」によるシステムはそのモニター機能しかないというクラッシェン氏の仮説には上記で紹介したような批判もありますが、第二言語の習得を考えるうえでは多くの示唆を与えてくれます。自分が英会話をするとき、過剰にモニターが効いていないか、その逆にモニターが少なすぎないかといった観点から発話内容を振り返ってみることで、英語力をさらに引き延ばすうえでのボトルネックが見えてくる可能性があります。大事なことはインプットした知識をどのように運用するかです。ぜひその観点から自分の英語を捉えなおしてみましょう。

【参照サイト】Principles and Practice in Second Language Acquisition

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