【インタビュー】Lang-8の英語学習アプリ「HiNative Trek」について代表の喜洋洋氏に聞いてきた

外国人とお互いの母国語を教えあう「ランゲージエクスチェンジ(語学交換)」がオンラインで気軽にできるSNSサービス「Lang-8」をご存じでしょうか?

Lang-8は2007年のサービス開始以降、詰めこむだけの学習ではなく「英語でこれは何というの?」とユーザーが自発的に知りたい、使いたいフレーズを元に学習できる点が国内外のユーザーに人気を博し、今ではオンライン英語学習サービスの中で最も人気のあるサービスの一つとなっています。

そのLang-8はスマホで英語を学ぶユーザーの増加に伴い、2014年からサービスをアプリ化した「HiNative」を提供開始し、昨年からはさらにネイティブ講師から発音や英語表現の指導が受けられるアプリ「HiNative Trek」もスタート。ビジネスマンが現場で活かせる英語の学習をメインとしたサービスを展開しています。

今回ENGLY編集部では、Lang-8が提供する英語学習サービス誕生のエピソードをはじめ、ITコースに続き今年4月にビジネス英語コースをリリースしたHiNative Trekとはどのようなサービスなのか、同社の代表取締役である喜 洋洋氏にお話しを伺ってきました!

話者プロフィール:喜 洋洋(株式会社Lang-8代表)

中国生まれ、4歳から日本で育つ。京都大学工学部卒。大学在学中に1年休学し上海へ留学、Language Exchangeを行った経験から着想を得て、帰国後に語学学習向けSNS「Lang-8」をスタート。大学卒業後の2007年に株式会社Lang-8を設立。現在はLang-8のほか語学学習向けアプリ「HiNative」「HiNative Trek」の運営を行っている。

インタビュー目次

Lang-8、HiNativeの開発経緯

最初にLang-8をスタートした経緯を教えてください。

自分自身、幼い頃から日本で育ったので中国語があまり話せず、どうやったら外国語が身につくのかということにずっと関心がありました。Lang-8をはじめるきっかけとなったのは、大学時代に上海に留学したときの経験です。当時、中国語を学ぶにあたりランゲージエクスチェンジを行っていました。こちらが日本語を教えてあげる代わりに、相手に中国語を教えてもらうというものです。毎日中国語で日記を書き、それを添削してもらっていたところ、中国語がぐんと上達しました。そのときに、世界中の人がお互いの母語を添削し合ったら面白いのではないかと確信しました。日本に戻るとちょうどSNSが流行っていたこともあり、大学在学中に「Lang-8」という相互添削型のSNSを作り、卒業と同時に会社を立ち上げました。そしてLang-8の運用を続け、3年前には「HiNative」、昨年には「HiNative Trek」のサービスをリリースしました。

それぞれのサービスの違いは何ですか?

Lang-8とHiNativeのコンセプトはほぼ同じで、自分が書いた文章が正しいかをネイティブスピーカーにチェックしてもらい、お返しにこちらも教えてあげるというものです。Lang-8はウェブ上でやりとりをするのに対し、HiNativeはアプリなので身近なスマートフォンを使ってさらに気軽にネイティブに質問できます。そして、HiNativeには質問のテンプレートがあるので「これはどういう意味ですか?」「これとこれの違いは何ですか?」と文章をすべて書かなくても聞くことができます。Lang-8とHiNativeはユーザー同士で教えあうCtoCですが、HiNative Trekはあらかじめテーマを用意し、英語ネイティブの先生が添削をするBtoCとなっています。毎日課題が届き、ユーザーが回答を提出したら先生が添削するというものです。

HiNative Trekで英語が身につく理由

HiNative Trekが英語学習に最適な理由を教えてください。

日本の英語学習ではインプットばかりでアウトプットが少ないんです。大学の英語というと、みんな話せないのに小説や論文などインプットだけがすごく難しくて偏りがあります。文章を読んだり音声を聞いたりして分かった気でいても、いざ自分が話す段階になるとなかなか出てきません。実際に海外へ行くと、買い物に行ったりしたときに自分で何か言おうとして「あれ、これ何て言うんだっけ」と疑問が生じて、答えを知ると初めて自分のなかで定着するんですよ。海外で語学を習得するプロセスはそのような順序ですので、これを飛ばして勉強してもなかなか話せるようになりません。

HiNative Trekでは音声の録音もできるので、いざ録音するときにこの発音でよかったかなと疑問が生じます。私はアウトプットが一番効率の良いインプット方法だと思います。よくインプットが足りない人はどうするんだと質問いただくのですが、HiNative Trekを使うときは辞書を引いてもいいんですよ。とにかく課題を見て疑問を生じるということが大事なんです。辞書を引いても表現がいっぱいあって、この場合はどれが一番いいんだろうと悩んで先生に教えてもらうことでかなり効率よく身につきます。

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HiNative Trekの特徴とはどんなところですか?

まず、予約が不要なので場所や時間を選ばずに学習できるということです。オンライン英会話では予約が取れなかったり、毎回違う先生で半分くらい自己紹介で終わることがあります。みなさん日中仕事があるので夜に集中しますが、HiNative Trekでは休憩中にぱぱっと音声を入れて、しばらくすると先生から回答がきて、また疑問があったら好きな時間に返事をしてという風に時間効率がかなり良くスマホの時代にはぴったりです。

あとは、文や音声のデータが残るので繰り返し復習できるというところです。同じアカウントでウェブでもアプリでも利用できるので目的に合わせて使い分けることができます。サイトのQ&Aに「これだけで英語が完璧になりますか?」という質問があって「なりません」と書いていますが、当然これだけで完璧になるわけではありません。とはいえ、ほとんどの方がアウトプットするというステップを踏まないのでなかなか次のステージに行けません。HiNative Trekでアウトプットをしてちゃんと身につくんだということが分かれば、また悩んでいたステージから次のステージに行くことができるのです。

HiNative Trekのサービス内容

先生はどのような方ですか?

先生は全員英語ネイティブです。試験や面接を行って講師経験やビジネス経験のあるアメリカ人を採用しています。採用後も先生の研修やマネージメントはしっかり行っています。生徒1人にはずっと同じ先生がつきますので、日によって違うということはありません。回答には毎回音声がついて、ネイティブの先生から発音の指導や文章の添削が受けることができます。添削や回答の品質についてはユーザーから高評価をいただいております。

教材はどのように作っているのですか?

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現在、HiNative TrekではITコースとビジネスコースの2パターンがあります。昨年にITコースを始めて、ビジネスコースを始めたのが今年4月です。ITコースでは「うちのサービスは競合の2倍のMAUです」というようにかなりITに特化した文章となっている一方で、ビジネスコースで使う表現は幅広く設定しています。それぞれ1ヶ月ごとに課題のテーマが決まっています。

例えば今は11月ですが、ビジネスコースでは「面接のやりとり」をテーマとしています。ある日の課題は「このたびはご応募ありがとうございます、履歴書を拝見いたしました」と一見簡単な文章で、おそらくこれを英語で読んでもみなさん理解できたでしょう。しかし、いざ今これを英語で丁寧に言ってみてくださいというとなかなか出てこない、発音もままならないことが多いです。

このようなビジネスコースの課題作成は、まずビジネス経験豊富な英語ネイティブの何人かに案を出してもらい、最終的に元アメリカ副大統領やフェイスブックのマーク・ザッカーバーグ氏の同時通訳をしていた関谷英里子さんに監修していただいています。

そしてITコースは、有名なIT企業で働いているアメリカ人のネイティブに、実際に日常の仕事でよく使う表現を教えてください、という形で5人くらいのチェックを受けて作りました。実践優先なので、難易度や試験といったことは関係ありません。

ITコースの課題の説明のひとつに「求人の書き方」とさらっと書いてありますが、裏側では、実際に日本のIT企業が書いている英語求人のちょっと間違っている文章や、アメリカの大手企業のちゃんとした求人などを分析して課題を作っています。1つひとつの課題の裏側はかなり実践的な作りになっています。

HiNative Trekの課題と学習時間の目安を教えてください。

左:月曜の課題、右:金曜のスペシャル課題

課題は5パターンあって、1週間で1周するようになっています。月曜日はウォーミングアップとして簡単な短めの英作文、金曜日はスペシャル課題が多いです。スペシャル課題は、例えば長文の英語を読んで要約したり、グラフを見てわかることを英語で書くというように徐々に難易度が高くなっていきます。

課題は提出だけであれば1つにつき5分から10分くらいで、復習してちゃんと身につけようと思ったら提出を合わせて20分から30分くらいが目安です。通勤中にテキストだけ入れて、歩いているときや休み時間に音声入れてという風に気軽に取り組むことができます。

このサービスの特徴は、後日にまとめて課題を提出できるところです。今日出せなかったから今日の分を損したということはありません。溜まりすぎるとやる気をなくすという人は、最初の1ヶ月は朝のこの時間にやるというペースを作ってもいいですね。社会人が毎日こなすのは敷居が高いと思われるかもしれませんが、上達している方はコツコツ続けて、3ヶ月ぐらいで発音などが明らかに良くなっています。

HiNative Trekで学習すると、どのような場で活かすことができますか?

メールでは英語が書けるけど会話はできないという方が多いと思いますが、このアプリを使うと発音を含め、実際の会話で活かすことができます。私自身、アメリカでHiNativeのプレゼンをするとき、ある程度文章を覚えて臨むのですが、覚えるべき文というのは、結構パターンになっていることが多いと感じています。質疑応答では同じようなことを聞かれるので、仕事で英語を使うときも一定のパターンを覚えてしまえば成り立つことが多いです。

ITコースの課題で出てきた「競合の2倍のMAU」という文章も、「何々の何倍の何々」という型を覚えたら「弊社の市場規模は昨年の3倍になっています」というように応用もできます。

会話練習も当然重要ですが、普段の会話ではすぐに応答しなければならないことから無我夢中で話してしまい、結局自分の中にストックされている感覚がないまま終了してしまいがちです。HiNative Trekの場合は業務中によく使う表現ばかりを用意しており復習ができるため、自分の中で使える表現の引き出しが増えていきます。

私自身、アウトプットしないと絶対に語学は身につかないということを起業時から一貫して感じています。

HiNative Trekの便利な機能を教えてください。

まず、HiNative Trekでは課題を提出すると、すぐに模範解答が音声付きで表示されます。ここまではよくある教科書や問題集と同じですが、課題に対する回答と模範解答がピンポイントで一致するわけはありません。自分が書いた文章がどうなのかというところに対して先生が「あなたの表現方法でやるならこういう方がいいですよ」「こっちだったらこういうニュアンスで伝わりますよ」という具合に添削してくれます。その上で音声で発音を確認してもらい、あなたの発音はここが弱いのでといったアドバイスと正しい発音の音声が送られてきます。音声のほか画像を送ることもできるので、先生が正しい発音の口の形を説明できるようになっています。

質問は1日3往復までできるようになっているので、以前の課題について疑問が生じたときにはいつでも質問することができます。

ビジネスマンのニーズに応えるHiNative Trek

ユーザーの方の傾向を教えてください。

年代は20代から30代が多く、性別に偏りはありません。HiNative TrekはITコースからスタートしたので、IT系の方が比較的多いです。しかしITコースしかなかった当初も「こういう仕組みの勉強法を探していた!」というお声をいただいて、ITとまったく関係ない職種の方も登録してくださっていました。現在は一般的なビジネス英語のコースができたので、IT以外の方も増えています。

ユーザー拡大に伴って、価格改定する予定はありますか?

まず値下げはありません。理由のひとつとして、安すぎると使わなくても罪悪感がないので続けづらいということがあります。社会人の方の選ぶ基準は実は値段じゃないんです。本当に困ると3ヶ月で数十万の英会話教室とかに平気で行ってしまいます。実際に安すぎない価格設定は、料金を自分のモチベーションにするということで必要かなと思います。

今後の取り組み

どの国でのシェアが多いですか?

HiNativeでは10カ国ぐらいの国籍のスタッフがマーケティング調査を行っていますが、HiNative Trekは日本以外で宣伝をしていないこともあり、ユーザー数は日本が一番多いです。ビジネス英語のコースは中国語、韓国語、ロシア語、スペイン語にも対応しているので、今後はアジアやロシアを中心に広げていきたいです。外国の方は英語を話せそうなイメージを持たれていると思いますが、みんな勉強に取り組んでいます。

今後、新たに計画していることはありますか?

今後は法人利用も増やしていきたいと思っています。今のところプレスリリースは打っていませんが、ビジネスコースとITコースのどちらも法人利用に対応しています。代表者の方がクレジットカードで登録して同じ部署や会社の方を招待できます。1枚のカードで決済できて、領収書もPDFで発行できます。今はビジネスシーンに特化した内容ですが、今後は日常会話といったところに展開する可能性もあります。

英語学習者の方へのメッセージ

HiNative Trekを特におすすめしたいのはどんな方でしょうか?

英語をやらなきゃと思っていて結局1年経っても何も変わらなかった人や、どうやって勉強したらいいか分からないという方ですね。レベルは高校、大学を卒業した方であれば十分です。日本だとアウトプットはほとんど全くしてこないのでアウトプットに関するレベルはみなさんそれほど変わらないと思います。課題を出すときは辞書で調べることもできますので、初級者の方でも始めやすいです。ただ単に安いという理由で始めるよりは、心から頑張って勉強しよう、お金も払ったしちゃんとやりきろうという方におすすめしたいです。

最後に、ENGLYの読者へのメッセージをお願いします。

Lang-8の事業は自分の人生をかけて行っている事業ですので、本質的に上達するものじゃないとやりたくないと思っています。さまざまなサービスに手を広げるのではなく、今は一点集中です。HiNative Trekは結果的にストイックなサービス内容となっていますが、ちゃんとやれば確実に身につきます。

私自身、仕事で英語を使うときには、ネイティブによく使う表現を音声データとして吹き込んで送ってもらったり、添削してもらってひたすら覚えるという方法で身につけています。英語を身につけたいならアウトプットは必須です。例えば実践の場として海外留学してもよいので、アウトプットを意識して勉強してください。

編集後記

幼い頃から語学習得へのアンテナを張り続け、中国語、英語と学んできた喜氏の「アウトプットが一番効率の良いインプット方法」という言葉にはとても説得力がありました。自らが使うときに必要となる英語表現を考え、疑問が生じたときに自発的に学び表現する。その過程を経て、1つひとつの英語表現が自分のものとして定着していくのだと改めて感じました。

HiNative Trekは昨年スタートしたばかりですが、ビジネスマンのニーズに応えるようブラッシュアップされた実用性の高いフレーズで注目を集めており、国内外でユーザーが増えています。妥協なくこだわりぬかれたサービス内容は、英語を学ぶビジネスマンの即戦力となる存在といえるでしょう。

HiNative・HiNative Trekの詳細

アプリ名 HiNative/HiNative Trek
提供元 株式会社 Lang-8
対応機種 iPhoneAndroid
強化スキル リーディング・リスニング・ライティング
発音 アメリカ英語
対象レベル 初心者・中級者
価格 HiNative 無料/HiNative Trek 月額プラン9,800円・年額プラン98,000円
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Engly 編集部

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